セルビア生活1周年

生まれ育った日本を離れ、ベオグラード空港に降り立ったのは昨年11月14日の深夜。 昨日でセルビアに来てからちょうど1年が経ちました。
このブログを始めた今年3月からの記録だけでも色々ありますが、書けなかったアレコレや書き始める前の4ヶ月間のことも思い起こして、ちょっと感慨に浸っています。 人間、歳を取るほどに時の流れを速く感じるというけど、私にとってこの1年は本当にあっという間。 これは歳のせいだけではないと思うのです。 (ないと言って誰かー (T T))


何もかもが珍しかった(というよりよく分かってなかった)最初の1〜2か月、やたら気に入らない面の方が目について結構しんどかったその後数か月、それらに対する慣れと諦めと受入れようとする気持ちで少しずつ落ち着いてきたここ数か月。
なんだかんだ言って、着実にこの地に愛着がわいているのを感じます。 思い出すのも楽しいことやうれしいことのほうが多いものです。 正直、まだ心底「セルビア大好き!」と言えるようにはなっていませんが、それは私が個人的に生活環境や質に求めるものをここで得るのが難しいからで、セルビアセルビアらしくあり私が私である限り、この先もずっとそうかもしれません。 それでいいのだとも思います。


1年経った今あらためて、私を支えてくれるすべての人々に深く感謝します。
  こちらの家族と日本の家族、天国のお母さん
  日本と世界の国からも見守ってくれている友達
  こちらで知り合った人々
  このブログで暖かいメッセージをくださる人々
  そして、いつも私を全身全霊でサポートしてくれるダンナサマ
本当に本当に、ありがとう。 そしてこれからもどうぞよろしく。


まだセルビア生活2年目は始まったばかり。 「はじめての」を失わない気持ちで毎日を過ごしていきたいと思います。

スラバ!(後編)

スラバの話まだ引っ張ってます。 (だいたい料理の話を詳しく書きすぎ >自分)


さて、怒涛の第2部、準備は万端・・・どっからでもいらっしゃい。
テーブルセッティングは万端!


スラバは、一度招待した人は翌年からわざわざ呼ばなくても来ることになっているものなのだそうです。 呼ばれたスラバの日は覚えているのが客の礼儀なのでしょう。 それでだいたい20名弱とは思うものの、実は誰がくるかははっきりとはしませんでした。 8時過ぎからチラホラと集まり始めましたが、残念なことにキャンセルの連絡も3件あって(普通カップルで来るのでつまり6名欠席)、テーブルがまだ半分以上空いています。 あんまり空席があるのもカッチョ悪いな〜と思ってたところ、急遽呼んだ友人達が3組ともOKで来てもらえることになりました。 9時前にはほぼ全部埋まり一安心。
皆さまおそろい


この第2部は、昼のようなセレモニーはしません。 来た順に席についてもらってジト、そして飲み物を勧め、しばらくしてから食事を始めるという感じです。
お料理の感想はだいたい親族と同じ。 お醤油LOVEな人がまた増えました。 肉だけでなくチーズパイにもパンにも、もう何にでも。
だいたい皿が空になったのを見計らって次の料理を出したり、飲み物が途切れないよう気を配ったり合間に洗い物をしたり、ホストはあまり座って話す暇がありません。 でもダンナサマが始終こまごまと動いてくれたのと、みんなが妊娠中の私の身体を気遣ってくれたこともあり、とても助かりました。 
デザートは第1部の教訓を生かして、私の作った3品を先に、義母の2品を後出しするという作戦を実行。 成功したかな。


ところで日本からつれてきたうちのネコのあんちゃん。 東京で彼女と二人暮しをしていた頃はたまの来客にも隠れるシャイな子だったのに、一度実家に引っ越して家族が増え、さらにセルビアに来てからはすっかり別人(別ネコ)のようです。 今では初めての客のひざに乗るのも平気。 この日も主賓席(そんなものはないのだけど、位置的に)に陣取って、スラバの間中動くことはありませんでした。 一応ホストネコとしての役割を自覚していたのでしょう・・・なわけないか。 お客がネコ好きの人ばかりでよかった。
主賓席から動かないあんちゃん


いやぁ〜しかしみんなよく喋ること。 仕入れておいたジョークや面白ネタをみんなが競って披露して、夜がふけるにつれ盛り上がります。 混じって爆笑できなかったのが残念でした。 アルコールもかなり入ってたはずだけど、グデングデンになる人は誰もいませんでした。 そういえばセルビアに来て以来、酔い潰れている人って見たことないな。


ようやく12時ごろから席を立つ人が現れ、最終的にお開きになったのは1時過ぎ。 片付けは翌日にしようかと思ったけど結局勢いでやり遂げました。 シャワーを浴びてベッドに入ったのは午前4時・・・ つ・か・れ・た〜。
でもみんな帰り際に「楽しかった、おいしかった」等ねぎらいの言葉をくれてとてもうれしかったです。 料理を手伝ってくれた義母や義妹に感謝しつつ、自分もよくがんばったねと満足して眠りについたのでした。

スラバ!(中編)

さていよいよスラバのメインイベント(?)食事会の始まりです。
まずはラキヤやワインなど、めいめい好きな飲み物で「Srećna Slava!」と乾杯してスタートしました。
ごちそうタイム


このメンバーで一番食べモノに注意深いのが義父。 初めて見るものにはいちいち「コレはなんだ」と確認してから口にします。
こちらの料理にサルマというこってりずっしりしたロールキャベツ(ブドウの葉を使うこともあり)があってスラバでも定番料理の一つですが、ここで出したのは日本の家庭でおなじみ、私にとっては普通のロールキャベツ。 今回はホワイトソースで煮込んだところ「甘くておいしい」との評価。 あ、甘いですと!? 甘い調味料は何も入れてないんですが・・・_| ̄|○ セルビアの味付けは塩とスパイスというシンプルで力強いものだから、これでも甘いって思われちゃうのかと改めて納得。 もう少し塩気を強くしてもよかったかも知れません。


ピヒティエは当然大好評。 カボチャのコロッケも「へぇ〜」みたいな感じで完売しました。 鶏のから揚げは過去に来客の好評を得ての予想通りOK。
そしてお寿司。 このメンバーにはちらし寿司を出したことがありますが巻き寿司は初めてでした。 一応説明として「お醤油をちょこっとつけて食べてくださいね。 手でいいんですよ」と、ぱくっと口に放り込んで実演。 だけど・・・みんなお上品なんザマス。 この細巻きをですよ、切れにくい海苔に苦労しつつナイフで半分にしてフォークで口に。 お醤油もごはんが崩れるくらいたっぷりつけるのでさらに苦労しています・・・ てか、辛くないのかな。
そうかと思えばかっぱ巻きには「あっ、辛いんだねこれ?」と少量のわさびにビミョウに反応。 私にとってはハバネロ?みたいな辛いパプリカも平気な人たちなのにね。 あ、誰だ〜だし巻き卵だけ取ってすし飯を置き去りにしたのは!(犯人は義父)


これまで見た限り、お醤油はセルビア人好みのよう。 お寿司を出したときにお醤油LOVEになっちゃう人がよくいました。 この日も他の料理や極真セルビアローストポーク(塩+スパイスバッチリ)にすらお醤油をつける姿が。


迫力的にはやっぱりローストポークが一番のメインでした。 前菜も3品義母と義妹に持ってきてもらって、とても助かりました。 自分のメニューだけだったらやっぱり物足りなかったことでしょう。


そしてデザート。 シュークリームとカボチャケーキは日本流のレシピ、つまり「あっさりした甘さ」。 チェリーケーキも砂糖だけ義母のレシピの半分にして作っています。 普通はそれでいいんだけど、今回は義母からのデザートが2品あったのが誤算でした。 彼女のチョコケーキとボンボンを食べた後は私のケーキが何の味もしなくなって・・・(汗)


そんなこんなでしたがスラバ第1部は和やかな雰囲気のうちに終了。 内心ドキドキでも、親しい親族だけだったので結局それほど気も使わずに済みました。 6時前にはみんなを送り出して、第2部の用意に。 追加の料理とテーブルセッティングも済ませて7時過ぎには準備万端となりました。


(後編へ続く)

スラバ!(前編)

毎年10月27日は聖ペトカという女性聖人の日。 聖ペトカを守護聖人(スラバ)としている我が家にとっては1年で一番大事な日でもあり、親族や親しい知人を招いてお祝いのパーティを開くのです。 このパーティもスラバと呼ばれます。
別の聖人をスラバとする家庭は当然スラバの日も違っているので、何度かお呼ばれしたことはありますがホストとなるのは今回が初めて。


この日は7時起床。 お天気も良くスラバ日和になりました(別に外でやるわけじゃないけど)。 うちは午後3時ごろに親族7名、夜8時過ぎに友人知人20名弱を招くという2部制にしています。 とりあえずは2時を目標に準備開始!
この日のメニューは・・・

■メゼ(前菜)

  • 義母のサラダ
  • 義妹のサラダ
  • 義妹のチーズパイ
  • アイバル
  • パプリカ入りクリームチーズ(出来合いのやつ)
  • スモークサーモンのサラダ
  • カボチャのミニコロッケ
  • ピヒティエ


■メイン

  • ロールキャベツのクリームソース煮
  • 鳥のから揚げ
  • ローストポークロール(肉屋に注文)
  • すし4種

■デザート

  • 義母のチョコケーキ
  • 義母のチョコボンボン
  • ミニシュークリーム
  • カボチャケーキ
  • チェリーケーキ


バタバタしてたらあっという間に11時、12時、と時間が過ぎてかなり焦る私、テーブルセッティングやお供えの飾りつけは全部ダンナサマに任せて台所で奮闘していました。
お供えには、聖人像とスラバケーキというパン、赤ワイン、そして教会で購入したろうそくを置きます。 スラバケーキはパン屋に注文したもの。 バラやハトなどの飾りつけがキレイです。
スラバケーキのアップ


ほぼ準備ができた頃に伯父、伯母が到着。 少し遅れて義両親と義弟夫婦も。 持ってきてもらったメゼやデザートの盛り付けを手伝ってもらっていると、「始めるよー」とリビングで声がしました。 スラバの始まりです。


我が家のあるじであるダンナサマが祈りの言葉を唱えた後、スラバケーキの底面に十字にナイフをいれ、赤ワインをかけます。 そして、「Srećna Slava(スレチュナ・スラバ; スラバおめでとう)」の言葉のあとジト(くるみと麦を煮て砂糖を加えたペースト)を一さじずつ皆で口にしました。 実はこれがどれくらい正式なやり方なのかはよく知らないとのことで、「まあ、雰囲気よ雰囲気」・・・そんな適当なことでええんですか。
写真左: おごそかな(?)儀式、写真右: ジト


さあこのあとはごちそうタイム!


 (中編へ続く)

スラバ前日

先日も書きましたが、スラバでは和食中心の珍しいメニューを出してやろうと鼻息荒く張り切ってた私。 でも一応は、しばらく前から夕食で少しずつ試食させて、ダンナサマに「セルビア人にも受け入れられやすい」とOKを得たものを厳選したのですよ。


その中の一つがちょっと前に好評だったかぼちゃのカレー風味マリネ。 こちらでは、カボチャはカボチャパイなどほぼお菓子の用途にしか使われないのです。 冷めても美味しいし珍しいからこれはイケル!と思ってたら、今回手に入ったカボチャが水気の多い品種。 色は鮮やかなオレンジ色で甘みもあるのに、ホクホク感まるでなし・・・。 急遽カボチャのケーキを作ってデザートに化けさせました。


もとが5kg位あったカボチャ、まだたくさん残ってるしメゼ(前菜)が一品足りなくなるので思い立ったのがカボチャのミニコロッケ。 レンジでふかしたカボチャをつぶしたあと弱火で気長に炒めて水分を飛ばし、塩コショウで炒めたタマネギとひき肉を加たら、ピンポン玉大に丸めて衣をつけてカラッと揚げる。 ピヒティエ作りに来ていたネマニャとダンナサマに試食してもらうと、「何これ美味しいじゃん!?」。 おっしゃあ!採用決定〜。 実際大量に作るとなるとかなり手間がかかってしまい、揚げるのは当日にしてこの日はタネ作りだけとしました。


あとは、ピヒティエ作りを横目に見ながらロールキャベツとシュークリーム、チェリーケーキ、握り寿司用だし巻き玉子を作って、ふと気がつくともう夜の11時。 マジですか!? やっぱ量が半端じゃないのはしんどいなー。


最後にテーブルといすを20数人分セットしてこの日はくたくた・・・
これで明日の本番大丈夫なんやろかと、一抹の不安がよぎる私でした。

週刊はじセル

あぁぁ〜・・・ここんとこすっかり週1回の日記になっている・・・ スラバ以降なんだかバタバタしています。 スラバのことをはじめ、書きたいことがあるのに忙しくなるなんて皮肉ですが、忙しいから書くこともたくさんできるんですよね。 いいことだ、うん。


まず市民大学の日本語講座の担任になりました。 週2回の授業。 ここの生徒たちがまた色々と面白いんで、授業しながら内心「ブログネタ、ブログネタ」と。
それから、ネタではないけれど先週は腹痛で2日間ウンウン言ってました。 ピヒティエの最後の3切れ全部、ダンナサマの知らない間に食べてしまったので(食うなって)、絶対そのバチに違いないと彼は確信しています。 ピヒティエはどうかとしても、やっぱりどうも食べすぎのせいらしいと、正直自分で思います・・・。 ごめんなさい。 もうあんなにつまみ食いしません。
それから、東京で働いていた頃の上司からネット経由でできる仕事の依頼があったり(ビバジャパンマネー!)、ダンナサマの友人の結婚式に招かれたり、自分達の結婚1周年を軽くお祝いしたり。


ヘーどーさんがいらしたときのこと(彼女のセルビア旅行記はさすが楽しい!)も書きたいんですが・・・ ああもう11月も7日なのですね。 
セルビアはもう晩秋。 私の感覚的にはすでに冬の入り口ですけど、そんな感じで元気にしてます。  ではまた来週〜!・・・(といわずできるだけ更新したいです)

ピヒティエ

「はじける☆クッキング」久々の登場です。 今日のメニューは当地方の伝統料理、ピヒティエ(Pihtije)。 豚や牛の骨、足、豚の耳などを煮込んで煮込んでゼラチンがたくさん出たスープを冷やし固めるという、いわばセルビア版煮こごりです。 作り方は単純ですが長い時間がかかるので、今では家庭で作られることはまれになったそうです。


スラバの2日前になって、急にダンナサマのいとこネマニャが「ピヒティエを作る」と言い出し、8月12日の日記でご紹介した薪コンロを使うということなのでおもしろいことになってきました。 
ピヒティエ作りはほぼ一日仕事。 自分は他の準備が忙しかったせいもあり、ネマニャとダンナとに任せて見物と決め込むことにしました。


田舎のオーソドックスなピヒティエは、豚の皮、耳、脚や尻尾など、それこそ食べられる部分を取り除いた後のくずばかりを使うのだそうです。 今回はちょっと豪華版にということで、お肉を多めに入れました。
 ・牛の背中あたりの肉 0.5kg
 ・牛のあばら骨つき 0.5kg
 ・豚 もも骨付き 1.5kg
 ・豚 すね肉 1.0kg
 ・豚の耳 6個
 ・牛の脚 1本
豚の耳は燻製済みで、また骨は購入したときすでに割られていました。 骨類はていねいに洗ってから、肉と一緒に大量の水にぶっこんで煮込みます。 ラーメン屋の寸胴みたいな大きな鍋が満杯に。


ていねいにあくを取ります
おぉ〜、この薪コンロやっぱり現役なんだ。 すごいな〜。 ところで写真の鍋があまり大きく見えないのは、ネマニャが横にも縦にも結構な大男だからです。 ちなみに彼はバンドのドラマー。
出来上がりを透明にするため、あくを丹念に取ります。 また、浮いてきた脂もできるだけ取ります。 粒の黒コショウと塩を途中で加えました。


こうしてグツグツ約4〜5時間、煮汁が7割くらいに減ったところで煮込み終了〜。 煮汁を濾して、肉・骨を取り出します。
煮込みが終わったら肉・骨を取り出します


骨と粒コショウを取り除いて肉だけを取り出します。 この肉を手で細かく裂き、さらにナイフで細かくします。
肉を細かくします


肉を深めの皿の底に敷き詰めてみじん切りのニンニクを散らし(これは好みで)、煮汁を上からゆっくりとかけます。
もうすぐ完成!


スープ皿6皿プラス大きなバット1つ分のピヒティエができました。 さあ、後は冷やすだけ。 冷蔵庫には入りきれず、もう十分寒い季節なので暖房の入らない部屋の外の階段に並べて一晩置くことにしました。 ちょっとシュールな光景。
冷やします


さて翌朝。 見事な出来上がり! 皿を逆さにしても落ちません。 皿の中で一口大に切って盛り付けたり、あるいはそのままテーブルに出します。
出来上がり!


口に含むととろ〜りととろけるテクスチャと、牛豚スーププラス黒コショウと生ニンニクの力強い風味が、面白い組み合わせだと思います。 思ったほど脂っぽくもありません。 コラーゲンたっぷりでお肌によさげ。 お肉がたっぷり入っているのでお客にも大変好評でした。
来年のスラバでは、純和風・魚の煮こごりも一緒に出してみるかな・・・なんて。