ジプシーの話

先日のお昼前でしたか、ダンナサマと車でニシュに向かう途中、道路の真ん中で大きく手を振る男の人が。 どうか停まってくださいとばかりに、大げさに両手まで合わせて深〜く深〜く頭を下げているのでした。 バスが1時間や2時間に1本というこの辺では、通りがかりの車に乗っけてもらおうと道端で親指立ててる人が珍しくありません。 めったに乗せることはないんだけど、あの頼み方はよもや事故かと無視するわけにいかず、まあお乗りなさいということになりました。 薄汚れた服装でひじのすり傷から血も流してたこの人、街までの15分間まあ喋ること喋ること。 私にはサッパリだったけど、ダンナサマは後部座席から何度もほっぺにお礼のキスをされながら苦笑いして聞いていたので、そう大した事件じゃなかったようでした。 ただ、かなりニオイが臭くて私にはちょっと辛かった・・・。


降ろした後で話を聞くと、あの近所で働いているジプシーだったとのこと。 なんでも、仕事の後飲みすぎて終バスを逃し、そのまま外で夜を明かしたのだとか。 バス代も無くヒッチハイクを試みたけど誰も停まってくれる人がいなかったらしい。 まあ、あのいでたちじゃあね・・・。 「あのケガは?」 「さあ、どっかで転んだんじゃね?」 なーんだ。 ま、その程度の話でよかった。


ヨーロッパの日本人観光客にはとかく評判の悪いジプシーとかロマと呼ばれる人たち、ニシュにもたくさんいます。 ジプシーというだけで嫌がる人も多いですが、実は少し違う場面もわりとよく見るのです。 レストランやカフェには、時々客に100円ライターを売りにくる子がいて、別に必要でなくても買ってあげる人が少なくありません。 信号待ちの車に近づき強引に窓拭きをする子もよくいます。 事前に要らないとは言うんですが、拭いてもらった後は(半分しょうがなく)小銭を渡します。 クリスマスの時期には家を1軒1軒ライブ演奏して回るジプシーバンドがいて、ちゃんと演奏料を渡しています。 違うバンドがいくつも来るので、しまいには小銭だけ渡して去ってもらうことも。 ただ物乞いしてるだけのジプシーもいますからそういうのには何もしてあげる気はないけど、一応あのように労働しているのならお金をあげてもいいという考えだそうです。


今はジプシーも定住生活をする人が少なくなく、あの彼のように仕事を持ったり学校に通う子供もいます。 ジプシーの歴史はよく知らないし、独自の文化などもあるだろうとは思いますが、私には彼らの生活はあまりにも厳しそうに映ります。 いい方に少しずつ変わっていくのならいいのでは、と思うのでした。