ついてない日

やってしまいました。
昨日、両親のところへランチに呼ばれて車を走らせていたところ、カーブを誤って道から転落。
そこはたびたび車が落っこちることで知られた「大カーブ」と名前まで付いている地点で、気をつけてねとダンナサマに注意を受けていたところでした。 「あっ大カーブだ。 スピード落とさなきゃ」とブレーキを踏んだとたんにスリップしてコントロールを失い蛇行、見事畑の中に突っ込んでしまったのです。 雨が降っていて滑りやすくなっていたところに、カーブに入る手前だったから少し強めに踏んでも大丈夫と思ったのがよくなかった・・・。


幸い横転などはせず、ぬかるんだ畑にズブズブと突っ込んだだけで本人は無事です。 心配されませんよう、先にそれをお伝えします。
ホントについてない日で、自分のふがいなさを痛感する一方、たくさんの人の親切を受けて(つまり巻き込んで)感動する一日でもありました。 何も詳細をお伝えすることもないとは思ったんですが、色々ありましたので、お暇があればこの後をどうぞ・・・



自分の身は無事とはいうものの、車の方はヘッドライトカバーが割れたりフロント部分が破損し、他どこが悪くなったかは不明。 頼みのダンナサマはあと10日はドイツだし・・・。 実は彼は、カーエンジニアリングについてはほぼプロ級、大抵の修理やチューニングを自分でやってしまう人です。 この車自体20歳以上と古いせいもあり、しょっちゅうせっせとメンテしています。 ドイツに行く直前も、知人の廃車のエンジンからいいキャブレターが手に入ったと喜んで交換したところでした。
ああ、彼があんなにあんなにかわいがってる車なのにとんでもないことになってしまったとか、修理代はいくらかかるんだろうとか、とっさにはそんなことばかり頭を駆け巡っていました。


とりあえず義母に携帯で連絡しましたが、細かいことがうまく伝わりません。 通りがかった車を止めて助けを求めたところ、親切なご夫婦で、義母と直接話して状況を伝えてくれ、さらにちょうど彼らも街に行くところだからと、両親のところまで送ってもらえることになりました。 落ちた車はひとまずそのまま。
おじさんはセルビア語だけですが奥さんの方は英語が少しでき、道中二人して「何も心配しなくていいから」とか「昨日もVWが一台落ちてたよ」とか、とにかく何か話して元気付けようとしてくれました。


迎えに外に出てきた義父に肩を抱かれると気持ちが緩んで、おとなげなくも涙が出てしまいました。 義父はすぐに車の引き上げに向かい、義母には精一杯慰められて泥だらけの靴も一緒に洗ってもらい、お茶を勧められてちょっと落ち着きました。
義父を待つ数時間の間は、何かして気を紛らわせた方がいいと、セルビア語のレッスンをしてもらったり、簡単なお菓子を一緒に作ったり。 やがて義父が帰ってきましたが、雨が激しくて引き上げ作業は明日にするほかなかったとのこと。 4時過ぎに義弟夫婦もやってきて、みんなで一緒に遅い昼食となりました。 義弟はおもしろいテレビでも見て早く寝なよと、新聞のテレビ欄を英訳して渡してくれました。 こうしてみんなのおかげで、本当に安心した気持ちになったのでした。


車がないと不便でしょうと、パンや野菜をたくさん渡されて、義父に送ってもらい帰ることに。 道中、大カーブの眼下に置き去りの車が・・・。 うわっ、やっぱりこれってホントだったんだ、みたいな。
家に着いて、改めてありがとうとごめんなさいを繰り返して義父を見送り、さあ入ろうとして愕然。 玄関の鍵がないんです。 バッグの中身全部出して逆さに振ってみたけど、ない。 転落の際車の中に落ちたとしか思い当たりません。
義父なら鍵を持っているはずだけど、彼は携帯を持たない人です。 落ちた車までは推定徒歩30分、行って鍵を取って来るか。 あ、でもドアをロックしたんだった。 工事中の2階の窓なら開いてるけど、どうやって登る? ああ本当にどうしよう。 もう暗いし、寒くなってきたし雨もやみません。 無駄に悩んだあげく、結局また義父に来てもらう以外ないと、義母にもう一度電話をしました。 ここから両親の家までは片道20分以上。 1時間くらい待つことになってしまうので、近所のスロボダンさんの所で待つように言われました。


スロボダンさんの家までは歩いて5分です。 途中、見知らぬご近所さんが私を見かけて「お宅の車落ちてたよね? ダンナは?」 ・・・ああもうみんな知ってるんだ(泣)
スロボダンさんは退役軍人の温厚なおじさん。 英語は全然話しませんが、このご夫婦とは何度か行き来があります。 訪ねていくと奥さんが驚きながらも笑顔で出迎えてくれました。 私のブロークンセルビアンでの説明を聞いて同情し、そして「最初の頃よりうーんと話せるようになったわねえ」とほめてくれ、さらにお茶とケーキまで勧めてくれたのでした。
そのうちスロボダンさんがなんとさっきのご近所さんと一緒に現れました。 たまたま遊びにきたとのことで、ダンナサマがドイツに行っていると知ると「困ったことがあったら言いなさい」と、電話番号をくれました。 


そして待つこと1時間弱。 今度は義父だけでなく義母も一緒に来てくれました。 またごめんなさいを繰り返す私。 義父は「マーフィーの法則だね、わはは」とおちゃらけています。 義母は「最近スロボダンさんに会ってなかったから、ちょうど遊びに行きたいと思ってたのよー」とさりげない。 泣けてきます。 そしてやっと自宅へ・・・。 時間は9時半を回ってました。


一人になるとやっぱり色々考えちゃいます。 おまけにその夜は停電までやってきて、テレビを見ることもかなわずにベッドへ。 暗闇の中、今日受けたたくさんの優しさを思い出しつつ、車のことを案じつつ、そしてダンナサマになんて詫びようと悩みつつ、3時くらいまで眠れなかった私でした。
ちなみに、ダンナサマに打ち明けるのは帰国後にしました。 今知っても彼にはどうすることもできないし、ただただ心配させるだけなので・・・。